text by 増田勇一 photo by TEPPEI

「好きなバンド」と「信じられるバンド」というのは、必ずしも同じではない。もちろん「好き」だからこそ「信じられる」というのもあるはずだが、そこにある信頼は、実は「信じたい」という願望であることのほうが多いんじゃないかという気がする。

 なんだか理屈っぽい書きだしになってしまったが、音楽リスナーとしての自分と、drug store cowboyとの関係というものについて改めて考えてみたとき、ふとこんなことが頭に浮かんだ。もっと具体的に言えば、2002年12月21日、渋谷AXで『myself and my world』ツアーの千秋楽ライヴを観ているとき、僕はそんなことを考えていたのだった。

 いや、べつに考えごとに夢中で彼らの演奏が耳に入ってなかったとか、そういうことじゃないから誤解のないように。要するに僕は、その場で、これまでこのバンドに対して抱いていた信頼というものがあくまで「信じたい」にすぎなかったこと、そして、それが、その瞬間に「疑いなく信じられる」に変換されたことを自分のなかで認識していたのだ。

 うん、要するにいいライヴだったってことである。
作品を重ねるごとに確実に成長を遂げ、最新作『myself and myworld』では、実験精神と冒険欲に支えられながら、さらなる自己探求をカタチにしてみせた彼ら。
しかしアルバムが完成した時点においては、僕自身は4人がまだあのアルバムに追いついていないんじゃないかと感じていた。つまり『myself and myworld』を、あの時点におけるバンドの自然体というよりは、半歩先にある現実的な理想が具現化されたものと解釈していたのだ。
 が、実際この夜のライヴを観て、僕は、彼らがこれまでに通過してきたことすべてを噛み砕き、しっかりと消化し、こちらが予想していた以上に足を大きく前に踏み出しているのだという事実に気付かされた。そう、その発見が「信じたい」からの卒業へと繋がったのである。

 敢えて炸裂と放熱を抑え、じっくりと腰を据えて相手の動きを読み取るかのようにして「星ノ原」で幕を開けたライヴは、徐々に、ジワジワとその温度を高め、気がつけばステージ上の4人が自在に空気を操るという構図が成り立っていた。
どんな曲をやったかとか、どんな服着てたかとか、有原がどんなこと喋ったかとか、そういうことについてはここでは触れない。ファン同士で情報交換するなり、雑誌を読むなりしてほしい。

そんなことより僕が、今、ここで念を押しておきたいのは「このバンドを信じてるなら、ちゃんと態度でそれを伝えろよ」ってことだ。
「好き」以上の気持ちを抱いてるなら、「それをもっと大きな声で叫べ」ってことだ。

 音楽業界とか出版業界とか、そういったオトナの世界において、ロックは今、むしろ冷遇されていると言わざるを得ない。新しい可能性はむしろ踏みにじられ、出る杭は、打たれるどころかひっこ抜かれてしまう。ぶっちゃけた話、現在のdrug store cowboyは、ギョーカイ的に見たら「最も注目すべきバンド」なんかじゃあり得ない。が、しかし、あの夜、あの場所で、僕と同じライヴを観たキミたちは、絶対にそこで確認できていたはずなのだ。このバンドがキミたちにとっていかに大切な存在であるか、を。

 僕は、それを心に秘めるだけじゃなく、外に向かって吐き出してほしいと言っているのだ。吐き出された強い感情は、いつか必ず風を起こすはずだから。

 終演後、渋谷AXのロビーで行なわれた打ちあげでも、その後の酒の席でも、4人はいたって平静だった。「今日、サイコーだったでしょ?」とも「イマイチでしたよねー」とも言わなかった。逆に言えば、いいライヴをやるのがアタリマエのバンドになったってことである。僕はその、いつもどおりの空気が嬉しかった。

 そうか、きっと嬉しかったからなんだろう。そのあと呑み過ぎてしまったのは。

SET LIST
01-星ノ原/02-flower's high/03-フルスピード/04-この世の終わり/05-朧月/06-Number'10/07-KingMaker/08-SUNNY DAYS /09-myself and myworld/10-夜がもう少し永ければ/11-under the ground/12-願いが叶う様に/13-Seventh Heaven/14-Another World/15-Perfect King/16-call me stupid/17-明日の街
アンコール1
01-And I Thought/02-PLUS/03-ヒトツボシ
アンコール2
01-beautiful my way
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